申請書作成のための生成AI活用

目次
  1. はじめに
  2. 申請書作成の3ステップ:着想、検討、構想
  3. 本質は「着想」にある
  4. 申請書作成で生成AIに任せる作業
  5. 2つのAIエージェント:発散と収束
  6. Agent-A:発散支援(材料集め)
  7. Agent-B:収束支援(文献の読み解き)
  8. エージェント間の行き来
  9. 倫理的な留意点
  10. まとめ
  11. エージェントリンク
  12. 関連

はじめに

研究費の申請書を書くのは、研究者にとって避けて通れない仕事です。しかし、不採択になる理由を振り返ると、研究の着想そのものよりも「書き方の問題」であることが少なくありません。審査者は多忙で、1件あたり10〜15分で判断すると言われています。良いアイデアでも、審査者に伝わらなければ評価にはつながりません。どう伝えるかを決める段階で、申請書の出来が決まります。
この記事では、デザイン思考の考え方と、2つのAIエージェント(Agent-AとAgent-B)を使って、申請書を書く前に研究の着想を広げ、検討を深める方法を紹介します。生成AIに代筆させるのではなく、自分で考える作業に使うことが大切です。

申請書作成の3ステップ:着想、検討、構想

申請書の出来は、書き始める前の準備に左右されます。私はこれを「着想→検討→構想」の3ステップで捉えています。


着想では、中心となるアイデアを見渡し、Knowledge GAP(まだわかっていないこと)を見つけ、仮説を立てます。ここが最も重要で、着想したアイデアの質で申請が通るかどうかがほぼ決まります。
検討では、「勉強」と「研究」を区別します。教科書や総説で答えが見つかるBackground Question(BQ)と、自分で研究して答えを出すForeground Question(FQ)を整理します。BQの答えを調べていくと、FQも明確になります。先行文献を批判的に吟味し、意義・新規性・実現可能性を確認するのもこの段階です。

構想では、文章化して概要を作成します。既存研究との関係を「地図」として描き、今回のプロジェクトの位置づけを明確にします。
この3ステップを丁寧に進めることが、よりよい申請書につながります。

本質は「着想」にある

申請書作成で生成AIが最も役立つのは、手間のかかる作業に費やす時間を減らすときです。しかし、忘れてはならないのは、申請が通るかどうかは着想したアイデアで決まるということ。
散らばったメモをそのまま入力しても、AIの回答は曖昧なものにとどまります。中心となるアイデアと、それに関わる考えのつながりを整理してから入力すると、回答の質は大きく上がります。AIの回答の質を左右するのは、入力の質です。


生成AIは「着想→検討→構想」の各段階で、考えを深めたり、構想を具体的にしたりするために使えます。使えば、着想や検討を飛ばせるわけではありません。


申請書作成で生成AIに任せる作業

生成AIを申請書作成に使うとき、3つの役割を意識すると効果的です。

  • 調べる手間を減らす。文献を要約し、論点を抜き出し、比較表を作り、論理の抜けを探す。

  • 考えを広げる。問いを多く出し、反証や代替案を洗い出す。

  • 考えをまとめる。見出しを考え、段落を要約し、表現を具体的にする。

AIが示した数字や引用の出典は、AIが学習時に得た情報に過ぎません。必ず原典を確認する必要があります。
また、Web検索機能を持つ生成AI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)の仕組みを活用してBQの答えを短時間で調べられます。特に、背景知識を調べる段階で役立ちます。

2つのAIエージェント:発散と収束

デザイン思考の「発散」と「収束」に対応する2つのAIエージェントを紹介します。どちらも無料で公開しています。

Agent-A:発散支援(材料集め)

申請書を書き始める前の「材料集め」の段階で使うエージェントです。申請書作成の3ステップでいえば「着想」のフェーズに対応します。
入力:研究テーマのメモや問題意識の走り書き
処理:3つの役割(探索役・検証役・設計役)が議論を展開します。

  • 探索役:テーマの重要性を整理し、全体構造を提案

  • 検証役:先行研究を探索し、その強さと限界を点検

  • 設計役:Knowledge Gapを整理し、研究で扱える問いにする

各役割が文献をスクリーニングし、合計30〜50本の候補から質の高いものを精選します。

Agent-Aを試す

Agent-B:収束支援(文献の読み解き)

Agent-Aで集めた文献を、申請書に使える形に整理するエージェントです。申請書作成の3ステップでいえば「検討」のフェーズに対応します。
入力:論文のPDFやURL
出力:構造化された要約。特に「申請書で使えるポイント」として、次の点を整理します。

  • 背景材料になる箇所

  • 方法論の参考になる箇所

  • ギャップの指摘

  • 引用時の書き方例

Agent-Bを試す

  • ChatGPT GPTs:x.gd/lMhmO

  • Google Gemini Gem:x.gd/PQTg0 (※ Gemini は 現在 URL のみの入力ではうまく動かないので、PDFもしくはテキストを入れてください )

エージェント間の行き来

2つのエージェントは、A→Bと直線的に使う必要はありません。
たとえば、Agent-Bで論文を読み解いているときに新たなGapが見つかったら、Agent-Aに戻って材料を集め直す。Agent-Aで出てきた文献の内容を深く理解したくなったら、Agent-Bで解説を生成する。こうした行き来を自由にできるのが、エージェントを分けて設計している利点です。
発散と収束を何度も繰り返すことで、着想を練り直しながら、Knowledge GAPと仮説を明確にしていけます。

倫理的な留意点

生成AIを申請書作成に使う場合、いくつかの点に注意が必要です。
機密情報と個人情報:入力データの匿名化は必須です。研究に関わる個人情報をAIに入力しないよう注意してください。
ハルシネーション対策:AIが生成した情報は必ず原典で確認する習慣をつけましょう。もっともらしい誤りを見落とさないよう、使う側が確認する責任があります。
「AIっぽい文章」の回避:曖昧で大げさな表現、抽象的な修飾語の多い文章は、AIが書いた印象を与えます。具体的で簡潔な表現を心がけましょう。
NIHのポリシー:NIH(米国国立衛生研究所)は2025年7月に、「AIで実質的に作成された申請書、またはそのような部分を含む申請書」は応募者のオリジナルなアイデアとして扱わず、審査対象にしないと明言しています。同一PIが1回の募集で40件超を出す事例も観察されており、審査体制の公平性を守るための措置です。

NIH(米国国立衛生研究所)は「AIで実質的に作成された申請書、またはそのような部分を含む申請書」は応募者のオリジナルなアイデアとして扱わず、審査対象にしないと明言。同一PIが1回の募集で40件超などを出す事例を観察。審査体制を過度に圧迫し、公平性や独創性を損ねうると整理。(2025年7月) pic.twitter.com/PWZ3uodZAw

— Shoei (@shoei05) January 20, 2026

科研費の位置づけ:科研費は「研究者個人の独創的・先駆的な研究」を支援するものです。JSPSは生成AI利用について、著作権侵害や情報漏洩のリスクに留意するよう注意喚起しています。 https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/35_kokusai/05_sendou/koubo.html
文部科学省の研究活動の定義にも「自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造」とあります。AIはあくまで補助ツールであり、研究の核は自分自身の考えでなければなりません。

科研費公募要領(令和8年度国際先導研究: 1月9日発表)より。"研究計画調書の作成に当たって、生成AIを利用することは、意図せず著作権の侵害、個人情報や機密情報の漏洩につながるリスクがありますので、このことに留意した上で研究者個人の責任において判断してください。" https://t.co/fUfnd8fapi pic.twitter.com/KfNZXOznum

— Shoei (@shoei05) January 31, 2026


まとめ

申請書作成で最も大切なのは、着想の質です。核となるアイデア、つまりKnowledge GAPと仮説がしっかりしていれば、申請書は自然と説得力のあるものになります。生成AIは、「着想→検討→構想」の各段階で手間を減らし、考えを深めて構想を具体的にするために使えます。Agent-A(発散支援)で材料を広く集め、Agent-B(収束支援)で文献を読み解く。この2つを行き来しながら、デザイン思考の発散と収束を繰り返すことで、着想の質を高めることができます。AIは代筆に使うのではなく、自分で考える作業に使います。最終的な判断と責任は、研究者自身にあります。



エージェントリンク

Agent-Aを試す

Agent-Bを試す

  • ChatGPT GPTs:x.gd/lMhmO

  • Google Gemini Gem:x.gd/PQTg0 (※ Gemini は 現在 URL のみの入力ではうまく動かないので、PDFもしくはテキストを入れてください )

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